F1のピットストップにおけるタイヤ交換の速さは凄まじく、
その最速タイムは2秒を切ります。
0.1秒を削りとるために、ドライバーやマシンだけでなく
ピットクルーやタイヤのホイール、ホイールガンに至るまで進化し続けています。
今回は、ホイールガンについて解説しようと思います。
ホイールとナット
市販車の場合、ホイールとナットは分離しており、
ナットは複数あることが普通ですが、
F1では作業簡略化のために、1つのナットがホイールと一体化している
シングルナットであり、このナットの脱落を防ぐセーフティロックが付けられています。
ホイールガンとは
ホイールガンとは、マシンにホイール(タイヤ)を着脱するための
ナットを回転させるインパクトレンチのことです。
締める方向と緩める方向に回転させることができ、
1つのホイールガンでホイールの着脱が可能です。
この締める方向と緩める方向はタイヤの回転方向によって決められており、
回転方向と反対方向が締める方向となっています。
このため、左右のホイールでホイールガンの回転方向は異なります。
その回転量も通常とは異なり、2回転ほどでナットを締めてしまうため、
ホイールガンが発生させるトルクは非常に大きくなっています。
また、ナットは6角ではなく、ナットとホイールガンにそれぞれ10~20ほどの歯がついており、
それらが噛み合うことでナットを回転させます。
これは、ナットとホイールガンが噛み合うまでの回転量を少しでも減らし、
作業時間を短くする狙いがあります。
作業ミス
2021年シーズン第5戦モナコGPにおいて、2位を走行していたメルセデスのボッタスが、
このホイールガンに関連するピット作業ミスでレースを失いました。
右フロントタイヤのナットが外れずに、そのままレースをリタイヤすることになりました。
国際映像で、ホイールガンが回転し始めた瞬間から、
金属片が飛び散るのが確認でき、ナットの歯が完全に舐めてしまったのが確認できました。
ホイールガンとナットの歯が噛み合う前に、ホイールガンを回転させてしまうと、
その強力なトルクにより、ナットの歯を舐めてしまうことがあり、
これが原因ではないかと考えられます。
コース上での追い抜きがほとんど不可能であり、トラックポジションが最重要であるモナコGPにおいて、
ピット作業は非常に重要であり、ピットクルーの焦りが出てしまったのかもしれません。
トラックポジションについては以下の記事で解説しておりますので
そちらをご覧ください。
また、ピットインのタイミングや、ラップタイムの変化については
以下の記事で解説しておりますので、そちらをご覧ください。