F1ドライバーは速く走るために、常にマシンの限界を引き出そうとしますが、
しばしば、ブレーキロックというミスを犯します。
このブレーキロックとはなんなのか、なぜ起こるのかを解説しようと思います。
ブレーキロックとは
ブレーキロックとは、ブレーキを強く踏みすぎてしまうことで、
タイヤの回転が止まり(ロックし)、タイヤが滑っている状態のことを指します。
タイヤがロックしていると、直感的には
いかにもマシンを止めようとしているように見えますが、
制動力(マシンを止めようとする力)は、
タイヤが回転している場合に比べて小さくなります。
これは簡単に、静止摩擦係数よりも動摩擦係数の方が小さいから
と説明できます。
また、制動力が小さいだけでなく、タイヤが滑ることで
フラットスポットを作ってしまうというデメリットもあります。
フラットスポットについては以下の記事で解説しておりますので
そちらをご覧ください。
このため、ドライバーにはタイヤがロックしないギリギリを攻める
ブレーキが求められます。
市販車の場合、このブレーキロックを防ぐために、
アンチロック・ブレーキ・システム、いわゆるABSが搭載されています。
これはタイヤの回転数を測定し、タイヤがロックすると自動的にブレーキを弱める装置です。
通常では滅多に作動しませんが、フルブレーキ時にABSが作動すると
ブレーキペダルが振動しているような感覚を得られます。
現代のF1では、ABSのようなドライバーを補助するような装置、
いわゆるドライバーエイドは禁止されているため、
ABSやトラクションコントロールは搭載されていません。
なぜブレーキロックが起こるのか
先程、ブレーキロックはブレーキを強く踏みすぎることで起こると説明しましたが、
もう少し詳しく説明しようと思います。
ブレーキロックは基本的にフロントタイヤのみで発生します。
走行中フロントタイヤは当然回転しており、これは
路面とフロントタイヤの間で生じる摩擦力によるものです。
ブレーキ時に、タイヤ(正確にはブレーキディスク)には
回転を止めようとする方向に力が加わり、これにより
マシンを制動します。
このブレーキディスクに加わる回転を止めようとする力が
路面とタイヤの間で生じる摩擦力を上回ってしまった場合、
タイヤの回転が止まり、ブレーキロックが生じます。
このため、制動力を回復するために、再度タイヤを回転させるには
ブレーキを弱める必要があります。
これは、マシンを止めるためにブレーキを弱めるという
一見矛盾した操作が必要になるため、非常に難しいものとなります。
ABSはこれを自動的に行う装置であり、一般ドライバーには欠かせない装置と言えるでしょう。
ちなみに、リアタイヤについては基本的にブレーキロックは発生しません。
リアタイヤは、フロントタイヤとは異なり、
エンジンがリアタイヤを回転させています。
つまり、リアタイヤがロックするということはエンジンが止まることを意味します。
実際には、エンジンは止まらずアンチストールに入ると思われますが、
通常走行中にリアタイヤがロックするということはまずあり得ません。