現代のF1では、サスペンション等の駆動部品やDRSを除いて、
パーツが変形することが禁止されています。
可変ウイングをも呼ばれるフレキシブルウイングですが、
何を目的に開発され、なぜ禁止されているのか、
最後にどのような抜け道があるのかを解説しようと思います。
フレキシブルウイングの目的
F1マシンはコーナー速度を稼ぐために、マシンの各部に取り付けられた
ウイングでダウンフォースを発生させています。
このウイングは、ダウンフォースを発生させればさせるほど
空気抵抗が増し、ストレートでの速度が落ちてしまいます。
そこで、各サーキットごとにダウンフォースレベルを変更することで、
1ラップトータルでのタイムを削っています。
ここで、コーナでのみダウンフォースを発生させ、
ストレートでは畳まれ、空気抵抗とならないウイングが理想的であり、
これがフレキシブルウイング(可変ウイング)の目的となります。
ダウンフォースとコーナー速度については以下の記事で解説しておりますので
そちらをご覧ください。
禁止された理由
フレキシブルウイングが禁止された理由は大きく2つあります。
まず、安全面を考えての理由です。
ウイングにフレキシブルさ、もしくは可変機構を持たせるため、
強度が落ちてしまい、ウイングが破損する事故が相次いだことにより、
多くのチームが可変機構を導入していた1969年に全面的に禁止されました。
もう一つの理由は、開発に多額の資金が必要とされるためです。
現代のF1はマシンの開発に膨大なコストがかかりるため、
これが新規参戦の大きな障壁となっているだけでなく、
チーム感の格差を広げてしまっています。
多額の資金を注ぎ込んで0.01秒でも速く走るマシンを開発するのが
F1の醍醐味でもありますが、チーム数の減少が見られる近年では
やむを得ないと言えるでしょう。
しかし、オーバーテイクの増加を期待して、可変ウイングである
DRSが解禁されました。DRSについては以下の記事で解説しておりますので
そちらをご覧ください。
規制の抜け道
ここまで、フレキシブルウイングは禁止である、
つまり、ウイングはたわんではならないと説明しましたが、
そもそもたわまないウイングを作ることは不可能です。
変形しない物体を剛体と呼びますが、これはあくまで
理想的な物体であり、実在しません。
剛体に近づけようとすると必然的にウイングの重量も増加してしまいますので、
速さを競うF1では不向きです。
そこで、妥協案として、ウイングに一定荷重を与えた際のたわみ量を制限することで
フレキシブルウイングを規制しています。
このため、各チームはこの規制を回避できる
フレキシブルウイングの開発を行っています。
しかし、F1の技術規則には「走行中に動きが見られる場合、さらなる負荷試験を行う」
とあるため、FIAと各チーム、あるいはチーム同士での駆け引きが見られ、
度々ライバルチームのウイングのたわみ量を指摘するという
レース外での攻防が話題となります。